【書評-1】そのうんざり感は「大人問題」かもしれない(大人問題/五味太郎)

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子どもにとって大人は有害である

実は、これが「大人問題」のテーマだったりします。なんともエッジの効いている言葉ですね。これを見た人はどんな感想が思い浮かびますか?肯定ですか?それとも反対でしょうか?スルーする人もいるかもしれませんね。あまりにも直球すぎて戸惑う人もいるでしょう。私の場合、その言葉の指す意味を辿っていった先に待っていたのは、「そもそも大人って何?子どもって何?」という疑問でした。

うーん、分からん。齢30歳の自分は「大人」なのか、果たして「子ども」なのか、親から見たら私は「子ども」でしょうし、三歳の甥っ子から見たら私は「大人」であるということは有り得そうですね。でも、「自分は大人である」みたいな感覚で誰かと接することは無いような気がします。でも、ニュースで未成年による事件なんかが報道されていると、よく分からないコメンテーターが、犯罪の低年齢化が~とか、最近の子どもは~みたいな論調で話しているのを聞くことが多いような気もします。彼らの言う「子ども」は何を指しているのでしょうね。

さて、この本の作者である五味太郎氏は、絵本やエッセイなど多岐にわたり様々な著作を世に出している作家です。「さるるるる」や「たべたのだあれ」は世界的にも有名ですよね。

他には岡山名物きびだんごのパッケージデザインを手がけていたりと、その親しみやすい絵には子どもから大人まで一度はお世話になった人も多いのではないでしょうか。そんな五味さんが現代社会に対してつらつらと書き綴ったのが「大人問題」です。「子どもの問題がどうとかこうとか」なんて言っている大人が一番問題なんだよ、というそんな感じの本です。本当にそんな感じなのでなかなか書評が書きにくいので「なんでそんな本を選んだんだよ」みたいな声が聞こえてきそうですが、まぁ良いのです。たとえこれが「ヒマつぶしのすゝめ」第一号のレビューであったとしても。

 

ホントはとことんオススメしたい本なんです

文章とか着眼点が最高に面白いし、極端なことを書いていたとしても一人の人間の意見として受け入れやすいので、読みにくさが無い。私はこの本が超好きなんです。でも、なんかオススメするにはエッジが効きすぎているんです。だって、この本には「大人は有害です」って書いてあるんだから。そして、なまじ私もそう思っているのだから。この本をオススメすることは多くの「大人」を攻撃することに繋がるような気もするのです。でも、ホントはこの本は「大人」を攻撃するためのものではない、ということも知っているのです。そう、この本はただ「大人」をからかっているだけなのです。そして「からかうくらいなら良いかなぁ」なんて思う私がいるだけなのです。

 

「大人問題」は結局のところ

マジメに見当違いなことを言っている人たちについて物申している本です。私見ですが、この社会というものは「中途半端なカテゴライズ」と、「無理やりな理解」で成り立っています。20歳にならないとタバコは吸えないし、お酒も飲めない、選挙にもいけない。「健全な社会を作るためにはルールが必要なんだ」というスタートは良かったにせよ、今は本質的な意味が見えてこないルールに多くの人が従って生きています。「なんとなく正しそうだからそれで良いのだ」なんて、一見すればバカボンのパパの発言のようですけど、よく考えたらびっくりするくらい窮屈ですよね。公平そうでいて全く公平でない、そんな見せかけのフェアプレーの滑稽さを、五味さんは「大人問題」と言ってからかっています。そして、うんざりしています。そんな「うんざり感」を持て余している人こそ、「大人問題」を読むべしなのです。

別に、この本を読んだところで、なにかがスッキリするわけではありません。でも、社会に対してどのように振る舞っていこうかを考えるキッカケにはなるかと思います。中途半端にカテゴライズされ、無理やり理解されているとしても、自分の態度や行動を決めるのは自分自身ですから。なんにせよ、「こういう書評を読んでなんとなく内容に察しが付く人は、きっと大人なんだろうなぁ」とか思いながらこの記事を書いてきたのですが、察しが付いた人も付かない人もとりあえず「大人問題」を読んでみたら良いと思う訳です。

文責:竹中辰也

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