入社3年以内に辞めるのは「最近の若者」だけではないという話
- 2015/11/17
- はたらく

「最近の若者論」の代表例といえば…
「会社に入社したのにすぐに辞めてしまう若者」でしょうか?この記事を書いている私も、新卒の時には3年以内に会社を退職した経験がありますので、恐らく「最近の若者」に分類されると思います。
もちろん私が会社を辞めた時にも「転職に響く」とか、「根性が無い」、「これだからゆとり世代は~」など色々ネガティブなことを言われてゲンナリした思い出があります。いわゆる「最近の若者はなっていない論」というやつの餌食になったわけですね。
でも、よく考えてみてください。入社3年以内に辞めてしまうのは本当に根性がないからなのでしょうか?「ゆとり世代」だから入社3年いないに辞めてしまうのでしょうか?テレビでもなんでも「最近の若者は我慢ができない」的な論調でトーク番組が放送されていたりしますけど、そんなに「昔の若者」は我慢して耐えて生きてきたんですかね?不思議です。
ということで、本当に「最近の若者」だけがすぐに会社を辞めてしまうのかどうか調べてみました。
入社3年以内の離職率の推移
ここにハローワークのデータがあります。これは、学歴別に卒業後3年以内の離職率を調べたもので、昭和62年~平成25年間までの情報がまとめているとのことです。ということで、まずは各グラフをご覧ください。
1.中学卒
2.高校卒
3.短大卒
4.大学卒
※ 事業所からハローワークに対して、新規学卒者として雇用保険の加入届が提出された新規被保険者資格取得者の生年月日、資格取得加入日等、 資格取得理由から各学歴ごとに新規学校卒業者と推定される就職者数を算出し、更にその離職日から離職者数・離職率を算出している。 3年目までの離職率は、四捨五入の関係で1年目、2年目、3年目の離職率の合計と一致しないことがある。
このグラフは、雇用保険に加入している方が対象となっているので、週20時間以上働いている方のデータとなっています。さて、グラフを見られた方はいかがだったでしょうか?最近の若者はすぐに辞めていましたか?
と、その前に「ゆとり世代」の定義を押さえておきましょうか。
ゆとり世代は以下の定義で範囲が区切られる。
広義では、小中学校において2002年度以降、高等学校において2003年度入学生以降に施行された学習指導要領(いわゆるゆとり教育)で育った世代1987年4月から2004年3月生まれ。
狭義では、ゆとり教育を受けた世代のうち、一定の共通した特徴をもつとされる世代1987年4月から1996年3月生まれ。
ソース:ゆとり世代 / wikipedia
こちらの定義からすると、ゆとり世代が就職したのは2010年(平成22年)以降となりますね。リーマン・ショックに伴う就職氷河期が2010年~2013年にあったとされていますので、ゆとり世代は就職氷河期とその後の不景気を直撃していることになります。ちなみに平成22年度大学卒の離職率は合計で31%、短大卒は39.9%、高校卒は39.2%、中学卒は62.1%となっていますね。数値からするとそんなに際立っていませんし、むしろそれ以前の10年間の方が離職率が高くなっているといえます。だからといって「ゆとり世代以前の方が早く離職しているじゃないか!」と憤慨するのもまだ早いかもしれません。それぞれの世代ごとに多様な事情があるからです。
2000年代半ばの輸出産業の好転で、雇用環境は回復し、2005年には就職氷河期は一旦終結した。新卒者の求人倍率は上昇し、2006年から2008年の3年間は一転、売り手市場と呼ばれるようになり、有効求人倍率は2006年から2007年にかけて 1 を上回った。13年近くにわたる採用抑制の影響により、多くの企業で人手不足となっており、労働環境が苛酷になる企業が増加した。また、従業員の年齢構成がひずんでいるため技術・技能の伝承が困難になっていた。このため、企業はそれまでの態度を覆し、こぞって新卒の大量採用に走り、求人倍率そのものは「バブル期並み、もしくはそれ以上」とも言われていた。
ソース:就職氷河期/wikipedia
こうした背景を踏まえていくと、「~世代はどうこう」とは簡単には言えませんよね。就職氷河期の後に残ったひずみの中、奮闘しているゆとり世代に対して敢えて言うならば、「ゆとり世代も頑張ってるよね」ではないでしょうか。
時代も状況も景気も、すべてが違う
私たちは一つの世界に生きていますが、必ずしも同じ時代を生きている訳ではありません。新入社員という言葉は同じであっても、それぞれが経験した新入社員というものは全て違います。失業なんてものもそうですよね。時代によって失業の経緯なんてものも変化します。言葉にすればありきたりなものでも、それに付随する物事は全く違うのです。
若者を「マナーがなってない」とか「常識がない」とやり玉に挙げる理由は、いつの時代も若者が年齢的に「経験不足」という点にあるのは明白です。若いというだけでそもそも叩かれやすい、という現状が間違いなくあります。誰しも幼少期や青年期を通過してきたはずなので、若者は若者なりに大変であることを理解しているはず。にも関わらず、若者と自分たちを同列に並べて語った上で落としたり持ち上げたりします。それが一時の慰みであるならば仕方ないような気もしますが、他者を貶めるよりも別の手段で状態を管理したいものですね。
出典:世界経済のネタ帳
ソース:学歴別卒業後3年以内離職率の推移
文責:竹中辰也
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