脳に性別は無い?「男性脳」「女性脳」に関する意外な研究結果とは
- 2015/11/6
- しる

「男性脳」「女性脳」という考え方にNO?
テレビや雑誌なんかで目にする「男性脳」「女性脳」という考え方。男性と女性の行動や考え方の違いを説明するためによく用いられたりしますが、皆さんはご存知でしょうか?
男脳は空間操作に長ける傾向にあり、女脳は言語操作に長ける傾向にあるとのデータがある。この差は、ヒトとしての進化の過程で狩猟採集生活が最も長期間であったため、そういった環境に適応した個体ほど生き残る確率が高かったことに起因すると考えられている。ただしこれが脳の構造に由来するか否かについては、まだ不明な点がある。
ソース:性差/wikipedia
「男性脳」「女性脳」という言葉は、男女の「性差」を説明するための論拠として用いられることが多かったのですが、実はこれまでにその差をハッキリと説明付ける研究結果は出ていません。「男性脳」や「女性脳」というワードで検索をかけても、その信憑性を裏付ける生体データもでてこないという状況です。
左右の大脳半球を連絡する約2億本の神経線維の大きな束である脳梁の後部の膨大部は、女性の方が丸みを帯びた形をしており、大脳全体との比率でみると男性よりも大きいという報告がある(ただし脳の容積は男性の方が大きく、脳梁容積の絶対値も男性の方が大きい)。脳梁膨大部は、視覚情報や言語情報の処理に関わる大脳半球間を連絡する神経線維からなっている。脳の構造や容積と、機能の関連は明らかでないものの、このような脳構造の違いが男女の微細な認知機能の差に関係していると推測する人もいる。
ソース:性差/wikipedia
実はこうした情報は数少ない解剖データに基づいたもので、あくまでも推測の域を出ていませんでした。要するに「男性脳」「女性脳」という考え方自体は、血液型占いと同じようなものでしかないということです。そんなハッキリしているようで曖昧な「脳の性差」について、イギリスから最新の研究結果が発表されました。
実はこれまで「ある」とされていた男女の脳の差が「無い」ということなのです。
脳の機能に性差はない?
リーセ・エリオットが率いる英国のロザリンド・フランクリン医科学大学の研究により、これまで「男性脳」「女性脳」の根拠とされてきた「脳の性差」は実際には存在しないという研究成果が発表された。
ソース:「男性脳」「女性脳」は存在しない?:英国の研究結果/WIRED
この「脳の性差」については、前項に書いてある通りです。脳梁の大きさは、脳全体からの比率からすると女性の方が男性よりも大きいとされてきました。しかし、実際はそうでなかったようです。
研究チームは、6,000件を超えるsMRI(構造的核磁気共鳴画像法)検査の結果をメタ分析した結果、まずは、脳の海馬の大きさに大きな男女差はないことを示した。
ソース:「男性脳」「女性脳」は存在しない?:英国の研究結果/WIRED
さらに今回の研究では、大規模なメタ分析により、海馬以外のふたつの性差説も否定されたという。具体的には、左右の大脳半球をつなぐ神経線維が束になった脳梁は、大きさに男女差があるという説が否定された。また、男女の脳は半球による言語処理の方法に大きな違いがあるという説も否定されたという。
ソース:「男性脳」「女性脳」は存在しない?:英国の研究結果/WIRED
こうした研究で微妙な差異を判別するためには、多くのデータが必要となります。技術に進歩によって生体情報の収集が容易になったことで、より多くのデータが集まるようになりました。もしかすると、私たちが当たり前のように思っていたことの中にも、「実は違った」という裏の面が潜んでいるかもしれませんね。
「ややこしくありたい」ということの大切さ
「血液型」や「星座」など、人はなにかとカテゴライズしたがる生き物です。「男性脳」や「女性脳」という言葉は、今後の研究によって「やっぱり存在した」なんてことにもなるかもしれませんし、このまま無かったことになるのかもしれません。でも、ホントのところはそんなことどうでもいいですよね。もし、本当に脳が男性と女性によって違っていたとしても、それが分かって別に得することなんてありません。
人は自分の考え方や能力について思い悩む時があります。「自分は~とは違う」とか「なんでこんな風に考えてしまうんだろう…」なんてことを一度でも考えずに生きてきた人なんていないハズです。それに、心ない他人から「男でしょ!ハッキリしなさいよ!」とか「女なのに料理もできないの?」なんて言葉をかけられて傷つくこともあったでしょう。そもそも、それぞれの人の考え方や能力は性別以前に個々によって違うのだから、男だから~とか、女だから~なんてカテゴライズしても全く意味がないはずです。しかし、それが未だにまかり通っているのは、それが「分かりやすいから」でしょう。
政治でもなんでもそうですが、大きく線を引いておけばその線の中だけで考えることができるのです。でも、そんな考え方ってくだらないですよね。「余計なことを考えなくても良い」というのは「面白くない」とイコールで繋がります。色んな要素を省いて、無理やり形に押し込んだものは面白くないですよね。面倒かもしれませんが、一人ひとりの人が違うということを認識した上で、それぞれに思いを馳せていくことが、面白くて良い社会の形成に繋がっていくのではないでしょうか。
ソース:The human hippocampus is not sexually-dimorphic: Meta-analysis of structural MRI volumes/Science Direct
There is probably no such thing as a ‘male’ and ‘female’ brain(英語)/WIRED.CO.UK
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